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ドローンに関わる刑法!知らないじゃ許されない最低限知っておくべき刑法

ドローンが社会にだいぶ浸透してきましたが、同時に警察に逮捕・検挙されたなどのニュースもよく耳にします。ドローンの飛行は様々な法律が絡んできますし、法律違反により罰則規定があります。罰金刑以上は前科がついてしまいます。知らなかったでは許されないのが法律です。

検挙数は年々増加傾向にあり2019年度では115件検挙されてます。そこでドローンで刑法に引っかかる事案や注意すべきポイント等を紹介します。

刑法とは…

刑法とは罪に対する罰を定めた法律で一般的に刑事事件に対して適用されます。しかしこの刑法には、広い意味での刑法と狭い意味での刑法の2つ意味があります。

上記で説明した刑事罰を列記した「刑法」が狭い意味での刑法です。一方広い意味としての刑法とは、狭い意味での刑法以外の法律も含んで考えます。

例えばドローンに関連する法律で例えると航空法、小型無人機等規制法、電波法などに違反した場合に科せられる罰についても広い意味の刑法として刑法に含まれるといえます。

このようなことからドローンも、航空法や電波法などを通して刑法と関わりがあります。

法律違反を行えば罰金刑、場合によれば懲役刑にも科せらますので、ドローンを飛行するにあたり関連する法律はしっかり把握しておく必要があります。


法律に違反しない事柄については、刑事事件ではなく民事事件になるので何かトラブルが起きても警察は民事不介入の原則で私人間の争いには入ってこれないのが原則です。
しかし、航空法や小型無人機等飛行禁止法違反はしっかり法律で規定されてますので、本当に検挙されたり逮捕されます。

ドローンに関わる刑法

ドローンを飛行していると意図せずに刑法違反で逮捕される可能性のあります。そのような刑法の罪を紹介していきます。(狭い意味での刑法)

  • 過失傷害罪
  • 失火罪
  • 往来危険罪

過失傷害罪

過失により他人に怪我をさせてしまった場合は過失傷害罪になる可能性があります。ドローンで過失傷害罪が考えられる状況は、操作ミス、無茶な飛行、バッテリー切れ、突然の悪天候による墜落などで、人と接触して怪我を負わせてしまった場合は過失傷害罪になります。もっとも意図的に人にぶつけた場合は、過失傷害罪より重い傷害罪になります。

刑の重さといえば…
傷害罪>業務上過失傷害罪>過失傷害
になります。

業務上過失致傷害罪の業務とは、人がその社会生活上の地位に基づいて反復継続して行う行為です。仕事でドローン飛ばしてる場合などがその例です。

第209条
過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

第204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害ではなく亡くなってしまった場合は、傷害罪より刑の思い過失致死罪が当てはまります。

刑の重さ
殺人罪>業務上過失致死罪>過失致死罪

第210条
過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する。

第211条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

失火罪

過失に基づく火災により建造物や器物などを焼いたときは失火罪により処罰される事があります。
ドローンでも失火罪になる可能性があります。ドローンはご存知のとおりリポバッテリーを利用してますがこのリポバッテリーは衝撃に弱く落下や何かに衝突をするとその衝撃で引火する事があります。

特にFPV飛行するマイクロドローンは、リポバッテリーを下腹部に剥き出しの機体も多く実際引火の事例は数多く聞いております。失火に関連する法律は以下の4つがあります。

「失火罪」
過失により建造物等を燃やしてしまうこと

「業務上失火罪」
消防士やボイラーなど火の扱いを業務にしている人の失火

「重過失失火罪」
重大な過失により失火を行ってしまうこと

「放火罪」
故意に建造物等を燃やす事

ドローンでは通常失火罪のみリスクがありますが、墜落して捕まるのが嫌だから逃げてしまい、その間に建造物を燃やしてしまった場合などは、「重過失失火罪」になる事も考えられます。

第116条
失火により、第108条に規定する物又は他人の所有に係る第109条に規定する物を焼損した者は、50万円以下の罰金に処する。

第117条の2(業務上失火等)
第116条又は前条第1項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、3年以下の禁錮又は150万円以下の罰金に処する。

過失往来危険罪

線路や標識の破壊、置き石などで列車の運行に危険を生じさせる罪。または、灯台や浮標の損壊などで船舶の航行に危険を生じさせる罪です。

ドローンを線路の近くへ飛ばして、誤って線路上に墜落したりして鉄道の運行に支障を与えたら過失往来危険罪が成立する事があります。
またドローンを海の上で飛行中、灯台や浮標、航行標識等を破損させてしまい船舶の運行に支障を与えた場合も同様に過失往来危険罪が成立することがあります。

第129条(過失往来危険)
過失により、汽車、電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、又は汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、30万円以下の罰金に処する。
その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

ドローンを飛行させる場合において、下記の3つは誰も誤った操作や点検・整備不足による飛行で罪を犯してしまうリスクがありますので十分に気をつけましょう。

  • 人との接触
  • バッテリーの引火
  • 電車の支障を及ぼす行為

故意の犯行ではなく自分の操作ミスや点検不足、飛行技術不足、知識不足から警察に逮捕されてしまう事が本当にあるのです。

悪意を持ってドローンを利用する事により成立する刑法

意図を持ってドローンを利用して悪用した場合以下の罪に問われます。

  • 器物破壊罪 
  • 窃盗罪
  • 業務執行妨害

器物破壊罪

器物破壊罪の罪には、故意(意図を持って悪用する意思)が成立要件になります。逆を言えば操縦ミスやドローンの不具合により他人の物を壊してしまった場合には刑法の罪には問われません。ただし刑法では罰金を支払う必要がありませんが民事で損害賠償請求をされます。

第261条(器物損壊等)
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

窃盗罪

ドローンに釣り針を下げて下着泥棒や空き家に侵入して物品を盗む行為をすれば当然ですが窃盗罪になります。現在のドローンではあまり現実味がないのですが将来アーム付きドローンが出始めると窃盗目的でドローンを利用する人も出てくる可能性があります。

第235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

威力業務妨害罪

ドローンにおいて業務執行妨害は過去に何件か実際に発生してます。
2015年に首相官邸無人機落下事件がありました。このドローンには放射能マークが印刷されたシールを貼った容器と発煙筒などを装着されてました。

後日、墜落させた男は自首して捕まり【ドローンを操縦し、首相官邸屋上に落下させて官邸の業務を妨げた威力業務妨害罪】で逮捕されてます。
又は浅草の三社祭でドローンを飛ばすと「予告」したとして横浜市の無職少年が威力業務妨害で逮捕された事件もあります。ドローンを悪用して業務妨害をすると威力業務妨害に科せられます。

第234条(威力業務妨害)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

第233条(信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

ドローンでは罰せられない刑法

ドローンを飛行しても以下の2つの罪状では罪になりません。

  • 住居侵入罪
  • 危険運転致死傷罪

住居侵入罪

他人の土地上空をドローンで飛行された場合は、住居侵入罪にはならないとされています。
なぜなら住居侵入罪は、人に対して適用されるものであり人以外のもの(ドローン)には適用されません。他人の庭で飛行したり、庭にドローンが墜落しても住居侵入罪にはなりません。
そもそも住居侵入罪は地上から離れた上空には該当しないとされてます。

第130条(住居侵入等)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪は、自動車の危険な運転によって人を死傷させた際に適用される犯罪です。
自動車とバイクが対象で現在ではドローンは対象外と思われる。

故意と過失の境目は…

法律において故意と過失はかなり結果が大きく違ってきます。
法律の考えで言えば…

  • 故意…知ってる(悪意
  • 過失…知らない(善意

ざっくり言うと、わざとなのが故意、うっかりなのが過失、ドローンの飛行で考えるならば操縦ミスや点検不足による機体の墜落は過失です。犯罪目的で利用する場合は故意になります。
刑法では犯罪について故意犯の処罰を原則としてます。過失犯については法律で個別に過失も罰則すると規定がない限り罰せられません。
故意と過失の境目は曖昧で、以下の状況ですとすべて故意としてみなされる可能性があります。

① 「認識ある過失」

ひょっとして危険性が発生するかもしれませんが、発生してもしょうがないかな。程度の認識で、ドローンを飛行をした場合、故意有りと見なされる可能性があります。


機体が明らかに不具合があり、墜落するリスクが高い状況で飛行を続けた場合

②「法的評価」の誤り

「事実」認識が間違えているのか「法的評価」の間違いなのかという問題です。「事実」認識の誤りなら弁明の余地がありますが、「法的評価」の誤りであれば、弁明の余地はありません。


商店街など人が多いとこでの低空飛行は、人と接触するリスクが高く何かしらの違法性はあると認識しつつも、具体的な罰則はないだろうと思い込んでいた状況で人に怪我をさせてしまった場合は、過失傷害ではなく傷害罪に科せらる可能性があります。

③法律を知らないじゃ許さない

知らなかったら許されないのが法律です。ドローンを使っても威嚇するような事をしても罪には問われないだろうと思いイタズラをした場合、威力業務妨害に問われる可能性があります。
※ 威力業務妨害は故意犯の場合のみに適用

下記の3つは、過失ではなく故意として処罰される可能性があります。故意は、事実の認識だけあれば、成立するというのが判例の立場です。

第38条(故意)
1、罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。

2、重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない

3,法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。

ドローンで捕まると刑務所にいくの?

ドローンで捕まると刑務所に行くかと言うと、その事案により異なります。(被害の大きさ、示談の有無)
何かしらの前科があったり、かなり悪質な飛行により人を怪我させた場合には執行猶予なしの実刑(刑務所)も当然あり得ます。
しかし実際は、悪用で使わない限りほとんどが軽微な犯罪が多く刑務所に行く事は低いでしょう。

逮捕後の流れ

何かしらの不法行為をして警察に逮捕されるとまずは警察署内の「留置所」に入れられ身柄を拘束されます。その段階で嫌疑不十分、微罪、厳重注意で済むと判断される場合は釈放されます。そうでない場合は、逮捕された後48時間以内に検察官の元に送検されます。

検察官は24時間以内に取り締まりを終えなくてはならないが、一般的に24時間で検察官の捜査が終了することはほぼありません。その場合は「勾留」に進みます。
検察官が勾留請求しない場合や、裁判官が勾留決定しない場合には被疑者は勾留されずに釈放されます。

被疑者は裁判所に連れて行かれて裁判官から質問(勾留質問)を受けてます。勾留されると少なくとも10日、警察の留置場に身柄を確保されます。(延長により最大20日間)検察官は勾留期限が切れるまでに起訴又は不起訴にするかを決定します。

嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予と判断されると不起訴の決定となり被疑者は釈放されます。
一方で証拠もあり有罪と判断されると起訴と判断され起訴後勾留がはじまります。(起訴されると過去の実例から99.9%有罪となってしまいます)

起訴されてしまうと刑事裁判に移ります。刑事裁判が始まるまでは1ヵ月ほどかかるのでそれまでさらに勾留されます。(この期間は保釈金を払うことにより一時的に釈放できる事があります。)

また起訴された段階で呼び名が、「被疑者」から「被告人」に変わります。
刑事裁判が開かれると、被告人の主張と検察官の主張・立証が行われます。双方の意見を聞いて裁判官が判決を下します。不服がある場合には控訴することができますが、控訴しなければ、そこで刑が確定します。

ドローンの多くが略式起訴

ドローンでは有罪でも略式起訴がほとんどでしょう。略式起訴とは、通常の起訴手続きを簡略化した略式手続きで処分を終わらせ起訴方法です。いわゆる裁判をせずに罰金を払う事により刑を終える場合に使われます。(100万円以下の罰金・科料に相当する事件)
ドローンの飛行禁止エリアでの飛行、飲酒操縦、電波法違反などが該当します。

書類送検

ドローンで違法行為をしても実は逮捕(身柄の拘束)されるのは稀で逃亡や証拠隠滅の恐れのない軽微な犯罪の多くは書類送検で済まされます。逮捕は身柄が拘束されることであり、書類送検の場合は身柄が拘束されていない場合の手続きです。
実際は書類送検の場合、大半の事例で起訴されることはありません。最終的に罰金などの処分を受けることが多いです。

まとめ

ドローンに関わる刑法についてなるべく具体的に紹介してきました。ドローンは航さ空法でも飛行機と同じように航空機として認識されています。扱っているのがおもちゃではないので、気楽に飛ばすのではなく最低限の法律は知ってからドローンを飛ばした方が良いでしょう。2019年度も警察に検挙された件数が115件と増え続けてます。逮捕されると刑法による刑事上の責任だけでなく、民事上の責任として損害賠償、行政上の責任として包括申請許可取り消しなど・違法行為には民事、刑事、行政上の3つ責任が発生します。知らなかったっけは済まされないのが法律です。楽しいドローンライフを送るためにも最低限の法律は知っておきましょう。

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