田んぼや畑、空き地など、全ての土地には必ず誰か所有者がいます。その所有地を利用するなら必ず許可がいりますが、その上空をドローンで飛行するのに許可は必要になるのでしょうか?飛行機やヘリは許可なく飛行してるので大丈夫なの?
そこでドローンに関して他人の土地上空で飛行するのは許可が必要なのか、法律の観点から紹介していきます。
目次
結論から言えば、第三者の土地の上空をドローンを飛行するには許可が必要になります。無断で他人の敷地(土地)上空を飛行すると損害賠償請求または立ち退きを請求される事があります。
なぜなら、土地上空300メートル以下は所有権が及ぶと解釈されてるからです。ドローンの高さ制限は150m未満ですので通常のドローン飛行の範囲では第三者の土地の上空を飛行するのには許可が必要になります。
所有地上空の権利などの根拠や理由、具体例または周辺の法律関係について詳しく紹介します。興味のある方は最後までご覧ください。
ドローンを飛行する上で土地の所有者・管理者との関係はとても重要です。土地の所有者は所有権を持っており民法においてもこの所有権は基本的な大原則であり、「所有権絶対の法則」として考えられてます。
所有権とは…
民法第206条
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
つまり、所有権は、法令や公共の福祉に反さない限りその土地に対して全面的に支配する絶対的な権利があります。ドローンに関しても無断で敷地内に侵入すれば損害賠償請求される事があります。
しかし、ここでの問題はその所有権の上空に関してです。土地の上空にまで所有権はあるのか?又はどのレベルまでの高さまで所有者の効力があるかです。
この所有権の上空に関して、民法207条では以下の通り定められています。
土地の所有権は法令の制限内においてその土地の上下に及ぶ
民法207条
と規定されています。この事から土地の上空または地下に関しても所有権が及んでいることがわかります。しかし、無制限に土地の上下に所有権を認めたら宇宙の果てから地球の中心まで所有権が広がってしまい現実的ではありません。
そこで所有権には2つの制限が科せられてます。
土地の上下に及ぶ所有権の制限として①法律の制限と②利益の損する限度に制限されると解釈されています。
土地の所有権の上空に関する条例の中にも、【法令の制限内において】と明確に記されています。
実際に土地の上空、または地下の所有権が制限が制限されてる法律を紹介します。
このようにさやまざなは法律よってで土地の所有者は制限さりております。記載されてない法律もあり、所有権は実はかなり制限されています。
Q. 飛行機が他人の土地を許可なく飛行できる理由は?
A.
飛行機が他人の土地上空を飛行できることを法律で認めてるわけではありません。それではなぜ、飛行機が他人の土地上空を飛行できるかと言えば、飛行機に飛行する権利があると言うわけではなく、土地所有権者が航空機に対して土地所有権に基づく請求を行う事は権利の乱用として認められないとの見解が一般的です。
飛行機が飛行する高度では土地所有権が及ばないか仮に及ぶとしても土地所有権を主張することが権利乱用であると考えられます。
土地の所有権はその土地の上下に及ぶと記載されてありますがもし制限なく上下に及ぶと想定すると、宇宙の果てから地球の中心まで土地所有権があることになり現実的ではありません。
このようなことからも土地所有権が及ぶ範囲は「利益の存する限度」とされてます。
利益の存する限度とは、簡単に言うと自己所有の土地を侵害された場合、それを文句を言うのに正当な理由がある場合です。もっと具体的に言うと、侵害されたことによる損失が有るのか無いのかです。損失が無い以上土地所有権の主張を認める必要がないと言えます。
ではこの利益の存する限度のどのぐらいの高さなのでしょうか。
目安としては航空機の最低安全高度と考えられてます。航空機の最低安全高度は航空法では、航空法81条において以下のとおり定められてます。
家屋密集地域水平距離600メートルの範囲内の最も高い障害物の上端から300メートルの高度。それ以上の場所であれば150メートル
航空法81条
と定められています。
つまり300メートル以上は利益の存する限度を超えているので土地所有権が及ばないと言われてます。
しかし、アンテナ塔や鉄塔など家屋密集地域外で150メートル超える建物はありますので、相対的に考える必要性もあります。あくまでも目安として家屋密集地域でしたが300メートル、それ以外の場所であれば150メートルが目安となるでしょう。
他人の土地上空を無断飛行による罰則は、民法と刑法の2つが考えられます。現実的に刑法で処罰されることはほぼほぼないのですが、民事裁判によって損害賠償請求がなされる事は十分あり得ます。民法と刑法それぞれについて説明します。
他人の土地上空を無断飛行したら民法709条による不法行為による損害賠償請求を訴えられる可能性があります。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、 これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第709条
「故意」とはわざと又は知っていてということです。見つからなければ大丈夫とかがコレに当てはまりますね。そして「過失」とは知らないことに落ち度がある場合や、ついうっかりといった場合です。
その土地の地権者を調べないで飛ばしたとか、操縦ミスや飛行エリアの勘違いで他人の敷地上空をうっかり飛行してしまった場合が当てはまります。
損害賠償は実際に被害が出た場合ですので、まず考えられるのが飛行の差し止め請求をされる事が考えられます。
ドローンを第三者の土地の上空で飛行する場合、気をつけるべきなのが刑法第130条と軽犯罪法1条32号です。
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは 艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しな かった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
刑法第130条
人の庭などに侵入してドローンを飛行した場合は不法侵入(住居侵入罪)として訴えられる可能性があります。
ただしこの条文を読んで見てもわかるとおり刑事罰の対象は人です。ドローンが他人の敷地内に侵入したとしても不法侵入(住居侵入罪)として訴えられる事はありません。
立ち入り禁止エリアに入ったら…
軽犯罪法1条32号
軽犯罪法1条32号
「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入った者」
空き地や田んぼ、山などに無断で入りドローンを飛行すると軽犯罪法として訴えられることがあります。山や自然公園の一部は意外と私有地もあるので注意が必要。
無断で撮影すると…
軽犯罪法第1条23項
軽犯罪法第1条23項
「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常 衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」
ドローンにはカメラが付いています。意図せず他人のベランダや浴室などが映り込んでしまうと覗きとして訴えられてしまう恐れがあります。痴漢の冤罪と一緒で訴えられると立場が弱いので第三者の住居の近くでは飛行しない方が良いでしょう。
もしこれら軽犯罪法に違反した場合、1日以上30日未満の身柄拘束または1,000円以上1万円未満の金銭徴収がなされる恐れがあります。なお民事罰と刑事罰は別々ですのでそれぞれに対して罰が言い渡されます。
他人の敷地の上空をドローンで飛ばしていいのか、だめなのか所有権を元に詳しく説明してきました。民法には土地の上下にも所有権が及ぶと明記されていますがその範囲が明確ではありません。
そのためあくまでも解釈上で判断ですが一般的に航空機の最低安全高度を目安にした場合300メートル以下の場合は、所有権が及ぶと判断されます。ドローンが飛行できる高度が150mなので許可なく他人の敷地内を飛行した場合は不法侵入に当たります。
罰則もありますので他人の敷地の上空を飛行する場合は、所有者の許可を必ず得ましょう。