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ドローンで知っておくべきプライバシー権!注意すべきポイントを紹介

ドローンを飛ばす目的と言えば、その多くが搭載されたカメラによる撮影が目的でしょう。ドローンは上空から360度あらゆる角度から撮影することが可能です。そこで意図せず他人のプライバシーを侵害してしまう恐れがあります。

また現在はYouTubeを始めSNSが活発に活用されています。SNSはその性質上一瞬で世界中に広まってしまうため権利侵害の問題が発生しやすい状況ではあります。また一度出回ってしまうと止める事ができません。証拠も残ります。

そこでドローンの撮影によるプライバシー権等を侵害を犯さないためにも、プライバシー権とは何か?プライバシー権で気をつけることなどを紹介していきます。

プライバシー権とは…

プライバシーとは人に知られたくない私的な情報の事です。誰しもが持っている個人的な情報です。そしてプライバシー権とは、その私的な情報、私生活上の事柄をみだりに公開されない法的保障・権利の事です。

このプライバシー権とはよく耳にする言葉でありますが、日本国においてプライバシー権という明文で規定した法律は実は無いのです。

日本で言われるプライバシー権とは憲法13条の幸福追求権を根拠に導き出された解釈の権利であります。

このようなことからプライバシー権とは明確な基準が曖昧な概念なのです。

しかし近年、プライバシー権の重要さが日に日に増してきている現在では裁判の判例の積み重ねによってある程度のプライバシーに対する基準が形成されて【権利】として認められるようになりました。

憲法第13条

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

憲法第13条

プライバシーの定義 (『宴のあと』事件の判例より)

「いわゆるプライバシー権は、私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利として理解されるから、その侵害に対しては侵害行為の差し止めや精神的苦痛に因る損害賠償請求権が認められるべき」

『宴のあと』事件の判例

<判例で認められたプライバシー情報の一例>

  • 前科,過去の犯罪行為
  • 疾病(持病・病歴)
  • 身体的特徴
  • 指紋
  • 日常生活・行動・住所
  • 身分行為(結婚・離婚)
  • 犯罪捜査としての情報(の取得)

ドローンに関しては、日常生活・行動・住所に関わってきます。もっと具体的に言えば、家の建物の撮影、ベランダ、人が撮影に映り込む場合に問題になってきます。

プライバシー侵害の4つの基準

先程も言いましたがプライバシー権は法律によって明文で規定されているものではありません。しかし過去の判例等により以下の4つの基準が目安とされています。(宴のあと事件参照)

  1. 私生活上の事実、またはそれらしく受け取られるおそれのある事柄
  2. 一般人の感受性を基準として当事者の立場に立った場合、公開を欲しないであろうと認められるべき事柄
  3. 一般の人にまだ知られていない事柄
  4. このような公開によって当該私人が現実に不快や不安の念を覚えたこと

これら4つの条件が当てはまらなければプライバシー権の侵害に当たらないとされています。

ポイントまとめ
・私生活上の事実がある事
・一般人の常識からしても公開は嫌がるレベル
・これまで公開されていなかった
・公開されて被害者が不快に感じた

ドローンによる撮影の違法性の判断基準

ドローンによる撮影が違法または適法なのかは、得られる利益と失われる利益を比較して決せられることになります。つまり撮影によって得られる利益と撮影によって侵害される利益を比較し、侵害される利益が撮影する利益を上回ると判断されると、プライバシー権が侵害されたと判断されます。
その時の違法性の判断基準が以下の4つです。

①撮影目的
②撮影方法、手段の相当性
③撮影された情報の種類、内容
④その撮影によって実際に受けた不利益の態様と程度など

Googleストリートビューはプライバシー権侵害に当たらないの?

平成24年福岡高等裁判所にてGoogleストリートビューのプライバシー権が争われました。ストリートビューはご存知の通り地図上に360度写真を表示することのできるサービスです。

その際に洗濯物や家の状況が撮影・公表されたことに対して原告がGoogleを被告にとってプライバシー権の侵害として損害賠償請求を求めました。
結果的に言えばGoogleによる撮影や公開は違法とされず原告の請求は敗訴となりました。

その理由が上記で挙げた4つの判断事由に当てはめると以下のとおりになります。

①撮影目的
地図サービスが目的

②撮影方法、手段の相当性
家やベランダの様子そのものを撮影対象したわけではなく公道から周囲全体を撮影した際に映り込んでしまったもの。

③撮影された情報の種類、内容
画像全体に占めるベランダの画像が小さい

④その撮影によって実際に受けた不利益の態様と程度など

社会全体の公共性(便利さ)と比較して侵害される利益は低いと判断
ただしGoogleストリートビューなどの有益な情報提供でもプライバシー権の問題になる事を示されました。プライバシー権は公開された情報、内容など相対的判断で判決がなされますので、権利の侵害が大きい場合はプライバシー権として認められることも考えられます。

盗撮疑惑のリスク

ドローンの撮影で特に気をつけたいのが意図せずの盗撮リスクです。ドローンはご存知のとおり空を自由に飛び360度の角度で撮影ができます。つまり旅館の近くでは露天風呂、海岸では水着の女性、住宅街では民家の洗濯物が意図せずに写り込んでしまうリスクがあるのです。盗撮は痴漢の冤罪と一緒で一疑われたら立場が弱い。

盗撮意思がなくても検挙されてしまう可能性があります。いくら自分が気にしないといっても写されている方の主観が判断基準になることを忘れないでください。

迷惑防止条例違反
1年以下の懲役、または100万円以下の罰金(※東京都の場合)

軽犯罪法違反
拘留(1日以上30日未満の懲役)または科料(1,000円以上10,000円以下の罰金)

  • 露天風呂近くでは飛行しない
  • 海水浴場・プール場近くでは飛行しない
  • 民家の洗濯物は映らないようにする

特に18歳未満の女性は刑法で厳しく取り締まっています。1999年に児童ポルノ禁止法が制定。2014年には「ひそかに児童ポルノに係る児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写すること」

に該当すれば、提供目的に該当しなくても児童ポルノ禁止法違反で刑事罰の対象となるように法改正が行われました。何より痴漢で捕まったら世間体も悪くなるし、下手すれば職場からの解雇処分を受けるリスクもあります。

撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン

平成27年に総務省【「ドローン」による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン】を策定しています。

ガイドラインはこちら
https://www.soumu.go.jp/main_content/000376723.pdf

ドローンを飛行させる際に撮影・公開・プライバシー権について注意点

①ロケハンをしっかり行い事前にプライバシーの侵害になりそうな箇所をチェックしていく。撮影目的を明確化する

②撮影時の注意点
マンションや戸建てにカメラを向けない。人物が写り込んでも特定できないぐらい距離をとる

③人の顔や車両のナンバープレート、住居内の生活状況を推測できるような私物にぼかし処理等を施す

まとめ

プライバシー権で実際に訴えられる多くは報道機関や出版会社です。趣味や業務目的でプライバシー権が問題となることは、実際は少ないです。

しかしこれから動画の時代に突入すると言われており、思わぬ形でプライバシーを侵害してしまう恐れが出てきます。インターネットは、一瞬で世界中に公開されてしまうので、よりプライバシー権が重視されてくるでしょう。一度出回った動画は、リンクやコピー、SNSの力により動画削除だけでは済まされない状況になり得ます。
意図せぬプライバシー権の侵害も多く、知らぬ間に盗撮で捕まってしまうリスクもあります。ドローンとプライバシー権はとても密接に関わってきますので、撮影には十分な配慮を行いましょう。

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